ひねくれ令嬢の婚活事情

「ご親切にありがとうございます。それで?」
「そ、それでって……。だから私は、マティアス様にはもっと相応しい方が……」
「それって貴女のことですの?それなら私にではなく、ご本人に言って差し上げたらいかがですか?」
「ち、ちが……」
「へぇ?私はてっきり、彼に相手にされなかったから私に文句を付けにきたのかと……」
「ひっ、ひどいわ!」

 ひときわ甲高い声でソフィーが叫ぶと、周囲の視線が瞬く間にオレリア達に集まった。

 ソフィーは目にうっすら涙を溜め、ぷるぷると震えながらもオレリアを睨みつけている。まるで獣に怯える小動物のようだ。

 そうしていると、不意に力が抜けてしまったのか、彼女の手からグラスが抜け落ちてしまう。中身の果実水が彼女のドレスの上に染みを作っていき、グラスが地面に転がった。
 その染みを見て、ソフィーは気が動転したらしく悲鳴を上げた。

「きゃあっ!な、何をなさるの?!」
「……私は何もしていませんが」

 ソフィーは緊張状態から半狂乱に陥ってしまったのかもしれない。何を勘違いしたのか自らのドレスとオレリアを交互に見て叫んでいる。

 二人の様子を遠巻きに見ていた周囲の人々が、ひそひそと顔を突き合わせている。オレリアが果実水をソフィーに浴びせたと思われているであろう、その様子にオレリアは面倒なことになったと額を抑えたくなった。
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