ひねくれ令嬢の婚活事情
その時、隣から声がかけられた。振り向くとソフィーがいて、彼女は何故か誇らしげな表情を浮かべ、オレリアを見上げていた。
「リリアーヌ様とマティアス様、とってもお似合いだと思いませんか?」
「そうですね……」
「リリアーヌ様は、幼い頃からマティアス様をお慕いされているんです。私はずっと応援していたから、知っています……。リリアーヌ様は本当にマティアス様が大好きなんですよ」
「そうですか」
オレリアが素っ気ない返事をすると、ソフィーはそれが気に入らなかったのか、頬をぷうっと膨らませた。やはり幼いな、と心の中で思う。
以前言っていた「マティアスに相応しい方」というのはリリアーヌのことなのだろう。ソフィーは純粋な友情を正義として、リリアーヌの恋路の邪魔者を排除しようと躍起になっている。
「マティアス様も、リリアーヌ様を大切に想われているんです。だからオレリア様、どうかお二人の邪魔をなさらないでください。マティアス様が求婚なさったっていうのも、本当は貴女がそう仕向けたんでしょう?」
ソフィーが勇ましく食ってかかる。
マティアスと二人で出歩いたこともないというのに、事実とはいえもう既にこんな噂が出回っている貴族社会の伝播力の凄まじさにオレリアは嘆息した。
もしかしたら、リリアーヌとマティアスの仲も貴族達の間では周知の事実なのかもしれない。浅ましい人々に囲まれる煩わしさから、社交を怠っていたオレリアが知らなかっただけで。
だが、マティアスは上位貴族といえど三男だ。爵位は彼の兄が継ぐ筈で、彼自身の肩書きは宰相補佐。本人達がいくら想い合っていても、王女の結婚相手としては不適格だ。