ひねくれ令嬢の婚活事情
「マティアス様……?」
物思いに耽っていたところを、オレリアが怪訝そうに見つめてくる。花に夢中になっていると思いきや、話しかけられていたらしい。
「ああ、ごめん。少し考え事をしていただけだよ」
考え事といっても、オレリアの事だ。それを打ち明けて、動揺しながら悪態をつく彼女を眺めるのも楽しそうだが、今日はやめておくことにした。非常に分かりにくいが、どことなくそわそわと落ち着きがないように見える。何か話したい事があるのかもしれない。感情の機微に敏いマティアスにはそれが分かった。
「……お忙しいなら無理に訪ねてこられなくても」
冷めた態度でオレリアはそっぽを向いた。拗ねているのではなく、仕事に忙殺されることの多いマティアスを気遣っているのだろう。そんなところもまた可愛らしいと思う。
「仮に忙しくても、君と過ごす時間の方が僕にとっては大切だからね」
そう囁けば、オレリアは大きな琥珀色の瞳をうろうろと彷徨わせ、そして俯いた。いじらしいその仕草にマティアスは笑みを深める。いちいちマティアスの好みを刺激してくるのだ。往来でつい抱きしめたくなってしまう。
だが、オレリアは意外にも初心だ。大層美しい容姿をしているが、人間関係が希薄なせいか男にも慣れておらず、些細な接触ですぐ顔を赤らめている――本人は気取られまいと隠しているが。
マティアスは自分の内から湧き出る衝動を理性で抑え込み、オレリアへ体を向き直った。