ひねくれ令嬢の婚活事情
「お……お受けしようと思うのですが…………」
堪えきれず、マティアスはオレリアの腰に手を回しぐっと引き寄せる。小さな悲鳴と共に胸を押し返そうとする非力な腕をまるごと抱え、オレリアの頭にそっと頬を寄せる。
「うん。オレリア、結婚しよう」
「ひ、人前です……!離して!」
腕の檻から逃げようともがくオレリア。残念ながら放してやれそうにない。なんせこの猫は甘え方が絶妙なのだ。マティアスは込み上げる愛しさをそのままに、火照った彼女の頬に口付ける。
「大丈夫。ここは、葉が生い茂っているから見えないよ」
それでも大の大人二人を隠すほどではないが、マティアスは敢えて言わないでおいた。明らかに逢瀬と分かるこの場面を邪魔する無粋な奴はそうそういないだろう。
往生際の悪く、未だに足掻き続けるオレリアを無視し、マティアスは嬉々として語り始める。
「まずは僕の両親に会ってもらわないとね。二人共君のことは歓迎しているよ。それから婚約証書を交わして……。多分、君の母上が色々言ってくるだろうけど、言い包める手段は何個か用意しているからオレリアは心配しないで。ああ、カフェでお茶でも飲みながら話そうか。決めることが多いからね」
パッと体を離し、オレリアを見つめる。明らかに安堵した様子で小さく頷いた彼女の手を取り、二人は温室を出た。