ひねくれ令嬢の婚活事情

「なんか君、噂と違うね」
「そうですか」
「うん。もっと、こう、高慢ちきなご令嬢かと思っていたよ。まあ、ちょっと皮肉っぽいけどね」
「…………私、貴方のように率直に物をおっしゃる方には初めてお会いしました」

 ご希望通り皮肉を織り交ぜて言えば、マティアスはますます可笑そうに目を細めた。

「もしかして怒ってる?」
「強いて言えば、大変不愉快な気分ですけれども」
「あはは。まあ、嫌がらせ云々っていうのは、流石に間に受けてはいなかったから安心してよ」

 だったら、ただオレリアを不快にさせるために言ったというのか。尚更たちが悪い。胡乱な目を向けると、反対にマティアスの唇が弧を描いた。

 オレリアは衝動のままに彼のつま先を思い切り踏んづけてしまわないよう、足元に視線を落とすことにした。

「それは良かったです。まあ、そもそも私に王太子妃なんてものは務まりませんので、エレーナ様を害する理由はありませんわ」
「それはなぜ?」
「悪役令嬢なんて言われている通り、私は性格に難がありますから」

 すると、頭の上からくすくすと噛み殺した笑い声が降ってくる。
 
「それは確かに。でも、僕は好きだな。君のそういう、ちょっと捻くれているところ」

 想定になかった言葉に眉根を寄せ、おもむろに顔を上げた。よほど不信感が露わになっていたのか、マティアスは大袈裟に肩をすくめてみせた。
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