ストーカー気質な彼女は,甘い溺愛に囚われる。
どじっ子な彼女。
彼女の存在に気がついてから。
彼女より先に,俺の方が気付くことも多くあった。
1番多いのは,今みたいにお昼のパンを買いに来ている時。
確かにあの子は僕の近くにいることが多いけど。
友達がいないわけではなくて,1人の女の子とよく笑いあっているのを見かける。
あんな風に笑うんだって,少しだけ,気にしてしまった。
だけど,彼女の存在なんて知らないふりをして,パンを選ぶ。
「ちょっと陽深! ……もぉ,それどうにかしなさいよ……どうせ静流くんだって気付いてないんだから。悪目立ちするよ?」
「友理ちゃん……だって……」
……知らないふりも,楽じゃない。
そっと後方を窺うと,友達の背中に,真っ赤な顔で隠れるあの子。
その可愛さがおかしくて,緩む頬を隠しながら,その場を離れる俺。
すると,パンを抱える僕の後ろで
「わわっ」
と声がして。
次にドサリと言う音がする。
「えっちょっと陽……」