あなたの世界にいた私
時間
私が目を覚してから1週間。
未だに、
左手だけ力が思うように入らなかった。
「…先生…」
「どうした?」
この1週間、ずっと黙っていた。
症状だと認めるのが怖かったから。
でも、もしかしたら、
私の病気の症状じゃないかも知れない。
それなら、早めに言って、
治療ができるならしてもらったほうがいい。
「…私が、目を覚ました日あるでしょ?」
私が話し始めると、
先生はベットの横にあった椅子に座った。
「あの日から、左手だけずっと…
…力が入らない」
「左手出して」
私がいい終わると、
すぐに先生はそう言った。
恐る恐る手を差し出すと、そっと握られた。
「今出せるだけでいいから、強く握って」
そう言われて、ぎゅっと握った。
でも、多分力が全然入っていないと思う。
「うん、いいよ」
そう言って、先生の手が離れていった。
「午後に検査しよう」
「…うん…」
私がそう言うと、
先生は何も言わずに病室を出て行った。