あなたの世界にいた私



-コンコン



「失礼します。おはよう、雪乃ちゃん」









朝早く入ってきたのは、先生。








いつもと何も変わらない。







回診の時間。







「昨日の今日で悪いんだけど、
今から検査したいんだけど大丈夫?」






「うん」




それだけ言うと、すぐに連れられた。













何も考えず…












そうじゃない。









雪斗くんのことばかり考えて、
それだけで時間が過ぎていく。








「うん、これで終わり。
お疲れ様。
検査結果は出たらまた言いに行くから」















「……別に言わなくてもいいよ…」




私がそう言うと、
先生は困った表情をする。








きっと、前の私だったら結果がどうであれ、
生きる希望がなかったから、
言わなくていいと言っていた。











でも、先生。












そうじゃないんだよ。






「……結果が悪くても…













…私、頑張るから…」







それだけ言って診察室を出た。




検査の結果は、
出なくてもなんとなくわかっていた。













確実に私の病気は進行している。









すぐに処置が必要な症状は、
最近頻度が減った気がする。










でも、左手に上手く力が入らない。








それだけだと思っていたけど、そうじゃない。












私の体力は、確実に落ちていた。










少し歩くだけで息切れがして、苦しい。












でも、雪斗くんと約束したから。














「…これでいいんだよね……」










私が呟いた声は、
周りの人たちに掻き消された。




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