あなたの世界にいた私
「おはよう、雪乃ちゃん」
なのに、私の主治医、優真先生は、
毎日変わらず同じ時間に回診にくる。
「体調どう?」
「…うん、いつもと変わらない」
そう言っているが、
体力は日に日に落ちていた。
呼吸も少し浅く、
先週からは、鼻にチューブを入れられた。
「ご飯、食べれそう?」
「少しなら」
「うん、ゆっくりでいいからね」
そう言って、食事を私の前に置くと、
先生と看護師は出て行った。
「…いただきます」
そう言い、あまり進まない箸を
ゆっくりと口に移動させる。
一口、二口。
頑張って、食べるが、
半分も減っていないぐらいで、限界が来る。
「はぁ…」
大きくついた、
ため息は私の耳にしか入らない。
部屋の静寂に飲み込まれる。
「…会いたい…」
そう言って、呟いた声も
誰か耳に入ることもなく、
虚しく消えて行った。