あなたの世界にいた私









「雪斗くん」








私がそう呼ぶと、
優しい微笑みと心地よい音色で、
「うん、何?」と、返事が返ってくる。





「私たちが出会ってすぐの時に、
雪斗くんは言ったよね。


















…私の世界を見てみたいって」










「うん。
でも、雪乃が話したいと思えるまで、
僕は待つよ」










雪斗くんは、優しくそう言ってくれた。









でも、
もう私は、雪斗くんに知って欲しいと
思ってしまったから、
言うなら今しかない気がした。















「少し長くなるけど、聞いてくれる?」












「うん、雪乃のペースでゆっくりでいいよ」









そう言って、
雪斗くんは私の手をそっと握ってくれた。












暖かい。

















こうして、ずっと、握って欲しかった。










大きくて暖かいその手で。







でも、握られた時、胸が激しく波打った。







今まで感じたことない、
自分でもよく分からない感情だった。





ドクドクと、
雪斗くんにまで聞こえてしまいそうだった。




< 117 / 207 >

この作品をシェア

pagetop