あなたの世界にいた私
「雪斗くん」
私がそう呼ぶと、
優しい微笑みと心地よい音色で、
「うん、何?」と、返事が返ってくる。
「私たちが出会ってすぐの時に、
雪斗くんは言ったよね。
…私の世界を見てみたいって」
「うん。
でも、雪乃が話したいと思えるまで、
僕は待つよ」
雪斗くんは、優しくそう言ってくれた。
でも、
もう私は、雪斗くんに知って欲しいと
思ってしまったから、
言うなら今しかない気がした。
「少し長くなるけど、聞いてくれる?」
「うん、雪乃のペースでゆっくりでいいよ」
そう言って、
雪斗くんは私の手をそっと握ってくれた。
暖かい。
こうして、ずっと、握って欲しかった。
大きくて暖かいその手で。
でも、握られた時、胸が激しく波打った。
今まで感じたことない、
自分でもよく分からない感情だった。
ドクドクと、
雪斗くんにまで聞こえてしまいそうだった。