あなたの世界にいた私
「まずね、
前にお父さんはいないって言ったでしょ?
…交通事故だったの」
私は、もう泣かない。
そう決めていた。
だから、泣きそうになって、
声が震えても決して涙は流さなかった。
そして、
雪斗くんは何も言わずに頷いて聞いてくれた。
「その後は、私のためにお母さんが、
朝から夜中まで働いてくれた。
でも、
お母さんもお父さんがいるところに
先に行っちゃったの。
…お父さんと同じ、交通事故だった」
初めは、
どうして私ばかり
こんなに辛い思いをいないといけないのかと、
先生に当たってしまった。
「病室からは出れなくて、
ずっと窓の外を見て、
何も考えずに、
一日が過ぎるのを待つの。
私の世界は真っ暗だった。
死が隣にあるだけで、
他に何もなかった。
初めは、
いつ死ぬかもわからない恐怖と闘ってた。
でも、いつのまにか、
早く…
…死んでしまいたいって思ってた」
私がそう言うと、
雪斗くんはギュッと私の手を握った。
不安な表情をして、
ただ私の話に耳を傾けていた。