あなたの世界にいた私
「…私ね、夢ができたの」
どう答えようか悩んでいた先生にそう言うと、
先生は隣にあった椅子に腰掛けた。
「それがね…
…雪斗くんのライブを見ることだったの」
「そっか」
分かってるよ。
先生は、それでも私の命を優先するって。
でもね、
私の身体のことだから分かるんだよね。
どれだけ生きたくて、
どれだけ頑張っても、
日に日に身体は弱っていくの。
どれだけ願っても、
前みたいには、
自分の身体なのに、
自由に動かせない。
だからね、せめて、
最後に、聞いて欲しいな。
「…私の…
……”最後”のわがままです」
私がそう言うと、先生は苦笑した。
悲しそうな、苦しそうな。
でも、諦めたように見えた。
そして、言ってくれた。
「分かった」
「…ありがとう」
「今日はもう、休んで。また明日ね」
そう言って、先生は病室を後にした。