あなたの世界にいた私
あなたの世界
次の日から、またいつものように、
治療をする毎日が始まった。
私は、雪斗くんのライブを見ることと、
その次の日に会うことを楽しみに、
頑張っていた。
そして、
一つだけ薬の効果を感じられることがあった。
両手の痺れはまだあるものの、
少し力を入れられるようになっていた。
「握って。
……うん、だいぶ力が出るようになったね」
先生がそう言って、微笑んだ。
「…どうかした?」
「え、あ、ううん…なんでもない」
誰かに似ているな、
なんて思って、先生が笑った顔を
じっと見てしまっていた。
でも、薬の効果が出ていることが嬉しくて、
すぐにその考えは頭の片隅に、
追いやられてしまった。
そして、
体力も少しずつだが、戻りつつあった。
このまま治ればいいな、
なんて思っていた。
それに、今度雪斗くんと会う時は、
前より元気になれるかもなんて、
少し期待した。