あなたの世界にいた私
すると、
先生は、振り返って、
「どうした?」って聞いた。
いつも通りだけど、
いつも通りじゃなかった。
先生は、
目を真っ赤にして泣いていた。
医者はきっと、
何人もの患者の“死”と直面している。
先生だって、担当は私が初めてでも、
少なくとも患者の“死”に直面するのは、
初めてではないだろう。
だから、
先生が泣いているのを見て、
私は確信したよ。
「……会いたかった…よ、
…ゆっくん」
私がそう言うと、先生は驚いていた。
ゆっくんは、私のこと覚えてるかな。
なんて考えてたけど、
私が昔呼んでたみたいに呼ぶと、
先生は嗚咽を漏らした。
あぁ、やっぱりゆっくんだったんだ。
なんて思ったら、
私も会えたことが嬉しくて、
また、涙が溢れ出してきた。