あなたの世界にいた私
今、伝えよう。
泣いてる場合じゃない。
そう思って、私は少しずつ話し始めた。
「……初めて、会った日…
…覚えてる…?」
私がそう聞くと、先生は何度も頷いた。
「あの日に…
誰かに似てるな…って、思ったの。
……でも、
…その時は、思い出せなくて…」
私が話し始めると、ゆっくんは、
ベッドの隣にあった椅子に座った。
「…でも……最近…ね、
…夢を見たの。
昔の…
…ゆっくんの…
…夢を見たの。
…それで、
……もしかしたら、先生が…
ゆっくんじゃないかって…思って」
ゆっくんは、昔言ったんだ。
覚えてないかもしれないけど、
引っ越す前に、
医者になって、
また、会いにいくと。
俺が、雪乃を元気にすると。
幼い時は、
同い年だと思っていたけど、
今考えればそんなはずなかった。
幼稚園にも、
いつもゆっくんはいなかったし、
私が勉強を始めるもっと前に、
ゆっくんは勉強をしていた。
それに、
大人になったゆっくんでも、
笑った顔は、昔と何も変わらなかった。
でも、その時は、
先生が、ゆっくんだという、
確信が持てなかったし、
何より私は、心に余裕がなかった。
塞ぎ込んでしまっていた。
自分を自分でコントロールできなくて、
思ってもいないことまで、口にしてしまう。
こんな、
捻くれた自分を見られたくなくて、
私は、
先生がゆっくんではないことを願った。
でも、昔の夢を見て、
その不確かが確信に変わった。
でも、その時にはもう、
私は思うように身体が動かなかった。
だから、気づかないふりをした。
ゆっくんは、
私のことを覚えていないかもしれない、
という可能性にかけた。
これ以上、
大切な人を
私のせいで苦しめたくなかったから。
でもね、やっぱりどこかで、
いつかはゆっくんと
また、昔みたいに話したい。
たくさん一緒に、
笑っていたいって思っていた。