あなたの世界にいた私





-ピッピッピッ


重い瞼を開けると、
一定に聞こえてくるモニター心電図。









起き上がろうとしても、
全く体に力が入らなかった。










「⁉





先生、藍原さん、目を覚ましました」









私が目を覚ましたことに気付いた看護師が、
ナースコールに向かって話していた。















そして、
すぐに優真先生が病室に入ってきた。
 








「雪乃ちゃん、気分どう?」









「……」









大丈夫って言おうとしたが、
声が出せなかった。














喉の奥まで何かが入っていた。






私の様子に気付いた先生は、
すぐに対処してくれた。








「ごめん、これ外してあげて」









先生は看護師にそう指示すると、
看護師は人工呼吸器を取り外してくれた。












「大丈夫?」









私の顔を覗きながら聞く先生に、頷いた。









「……先生…私、









何日間…眠ってたの?」








この体のだるさから、
二日や三日ではないことぐらい、
容易に分かった。











「三週間」









「…そっか。

















……先生……私、



















後…どれくらい?」













「分からない。








でも、症状が出れば出るだけ、
雪乃ちゃんの体力がもたなくなる。








それに、
症状が出る頻度が確実に上がっているから」









「うん、分かった。















……もう、大丈夫」









私は先生の話を遮った。











そんなに遠回しに言わなくても、
はっきり言ってくれればいいのに。








どこかでそう思ってしまう自分がいた。











でも、それでも先生の話を遮ったのは、
それを言わせたくなかったから。















“死を告げる”のは、辛いと思うから。














たとえ、それが医者であっても。













「…一人にさせて…」












私がそう言うと、
すぐに先生と看護師は病室から出て行った。




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