あなたの世界にいた私
「………うぅ……苦しい…」
涙でみんなの顔が見えないけど、
きっとみんな困惑している。
だけど、それでも僕は、
涙を止められなかった。
それから、少しして、
マネージャーから連絡があった。
今すぐ事務所に来るようにと。
「これは、どういうことだ」
「……すみません…」
「謝罪はいらない。
説明しろ。
どうして、お前が病院にいる。
しかも、
看護師に暴力を振るなんて、何を考えているんだ」
マネージャーが僕に見せた動画には、
病院で起きた一部始終が映っていた。
その動画はSNSで拡散されて、炎上していた。
それから、
病室番号の下に貼られていた雪乃の名前も、
動画に写っていて、
僕の交際相手だというコメントも何個も見られた。
「…女か?」
「違います!」
「じゃあ、なんだ。
説明しろ。
これで、お前がどれだけの人に迷惑をかけたのか、
わかっているのか」
「…すみません」
僕がそう言うと、
マネージャーはため息をついた。
そして、僕に言った。
「もう、会うな」と。
その瞬間、
さっきまで涙が止まっていたことが嘘のように
一つ、二つと涙が頬を伝う。
「……もう…
会えないん…です。
…………会いたくても…
…会えないんです」
僕がそう言うと、
マネージャーは何かを察したように、
僕の肩にそっと手を置いて言った。
「とにかく、お前は宿舎から出るな。
タイミングを見てこっちから連絡する」
それだけ言って、立ち去った。