あなたの世界にいた私
「メンバーがいて、
ファンの方たちがたくさんいて…
…僕は今…
…っ…幸せ…です」
こんな言葉は、
もう口にできないと思っていた。
雪乃がいないのに、
幸せになれるわけがないと、
そう思い込んでいた。
でも、今言った幸せは嘘じゃない。
雪乃がいなくなって、
今もまだ辛いし苦しい。
これから先も、その傷が塞がることはない。
でも、
それでも、
僕の近くには、
こんなにもたくさんの愛があるのだと知って、
心の底から幸せだと感じられた。
だから、ライブ配信なのに、
いや、そうじゃなくて、
みんなの前だからなのか、
子供のように、泣いてしまった。
雪乃のことを
やっと誰かに話せたからなのかは、
正直わからない。
でも、一人で抱えていた悲しみや
苦しみを誰かに話すことで、
どこか気が抜けたのかもしれない。
少しは、
楽になれたかもしれない。
「これからも僕たちをよろしくお願いします」
泣きじゃくる僕の後ろから、
メンバー全員が配信に出てきた。
そして、リーダーの律がそう言って、
頭を下げるとみんなも頭を下げた。
もちろん、僕も。
「じゃあ、これで配信は終わりです。
また、次はライブで会いましょう」
律がそう言って、長い配信は終わった。