あなたの世界にいた私
「雪乃は?」
「え…?」
「…元気?」
分からない。
私は病気だから、
雪斗くんが思っている元気とは、
かけ離れているのだろう。
でも、生きる理由がなかったころに比べれば、
元気なのかもしれない。
「うん、元気だよ」
きっと、大丈夫。
今までだって、
何度も死にたいと思っていたけど、
一線を越えたことはない。
だから、これからも大丈夫だと思う。
「……無理しなくてもいいのに…」
でも、雪斗くんには分かっていたんだよね。
私よりも私のことを。
でも、この時の私には、
自分のことを一番わかっていなかった。
だから、今思えば、雪斗くんだけでも、
私のことを分かってくれているのが、
嬉しかった。
「雪乃、
僕、必ずデビューして、
雪乃に見せるね。
僕の世界を」
「雪斗くんの世界?」
私がそう尋ねると、
雪斗くんは真剣な表情をして頷いた。
「だからさ、
ゆっくりでいいから僕に見せてほしい。
雪乃の世界を」
…私の世界。
雪斗くんに、見せられるものなのだろうか。
生まれて、
これから私の人生がスタートするという時に、
病気がわかって。
その病気は、治るかもわからなくて。
そんな矢先に、
事故でお父さんを亡くしてしまった。
それもあり、
私はずっと心を閉ざして生きてきた。