あなたの世界にいた私
「…今日は帰るね」
「うん、気を付けてね」
こうやって手を振って、
“またね”と言う。
私は、
これを後、何回出来るのだろうか。
後、何回、
雪斗くんに会えるのだろうか。
今まで死を待っているときは、
何も考えていなかった。
ただ、
淡々と何もない一日を過ごしていた。
なのに、
雪斗くんに出会ってからは、
今日したことを
後、何回出来るのだろうか、
と考えるようになっていた。
私は明日、死ぬかもしれない。
もしかしたら、
今日の夜に死んでしまうかもしれない。
なんとも思っていなかった“死”。
むしろ、望んでいたはずなのに、
少し、死ぬのが怖いと思ってしまった。
もう少しだけでいいから、
生きたいと思うようになってしまった。
「…どうしよう………」
帰り道、
私が呟いた声は日が沈んでいく中、
太陽と同じように消えてしまった。
音もたてず、ただ静かに。