あなたの世界にいた私








背が高くて、










スタイルが良くて、











すごく綺麗な顔立ちに目が離せなかった。








「あ、これ」








彼が私の肩に
かけてくれたコートを返そうとすると、







彼は、私の隣に腰掛け、それを遮った。









「名前は?







なんて言うの?」













「……藍原雪乃です」












私が名前を言っても、
彼は、特に何も返してこなかった。









「あの……













…名前」











「ここで何してたの?」










沈黙の後に、
私が名前を聞こうとしたのに、
また遮られてしまった。










「……」











でも、
その質問には何も答えられなかった。











病院を飛び出したなんて言えば、
きっと、戻った方がいいと言ってくるだろう。











このまま消えてしまいたいと思っていた、
なんて言えば、彼は困ると思うから。












「…何があったかは知らないけど、










僕、毎日ここにいるから、暇つぶしに来てよ。















雪乃のこと、もっと知りたいし」













私のことを知りたいと言われた時、
嫌だと思うはずなのに、
彼だけは嫌だとは思わなかった。






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