あなたの世界にいた私
「雪乃ちゃん、気分悪いとかない?」
「うん…大丈夫」
その後、いつもの病室に戻り、点滴を打たれた。
「雪乃ちゃん、当分もう外出は出来ないよ」
「分かってるよ。…今の私の状態ぐらい分かってるから」
正直、今は立っていることすらできなかった。
体がだるくて、力が入らなかった。
「雪斗くんだっけ?…雪乃ちゃん自身のこと言わなかったの?」
「………言えなかった」
「どうして?」
「………」
言えるわけないよ。
夢に向かって一生懸命な、
雪斗くんの邪魔なんてできないから。
私が病気だって言ったら、あなたは何て言う?
私が病気だって言ったら、あなたはどうする?
そんなの聞かなくても分かる。
雪斗くんは、優しいから、毎日病院に来てくれるかもしれない。
別に私が雪斗くんにとって、特別だからとかじゃなくて、
人はまず自分に何が出来るのかを考える。
そんなの、医者でもない私たちは、一つしかない。
それは、その人のそばにいること。
医者じゃない限り、隣にいてあげることしか出来ないから。
その答えが、雪斗くんにとっては、当たり前だと思うから。
それに、私はこの先、“死”しか待っていない。
そんな私に時間を使わないでほしいから。