あなたの世界にいた私
自慢なんて、一つもないし、雪斗くんみたいに輝いてないけど、
私が生きてきた私の世界を雪斗くんに、見せたかった。
この3週間そればかり考えてきた。
もちろん、怖い。
怖くて、苦しくて。
でも、雪斗くんになにも言わない方が、ずっと苦しいから。
このまま、何も言わずに死んでしまうのが、怖かったから。
雪斗くんと出会えたことを
私は、こんな終わり方をしたくないと思ってしまったから。
「…雪乃ちゃんの気持ちは分かるけど、今は無理だよ」
先生からその答えが返ってくることぐらい、分かっていた。
でも、私には今しかない。
明日、死ぬかもしれない。
なのに、雪斗くんに何も伝えられないのは嫌だ。
きっと、後悔してもしきれない。
「…先生、お願い」
視界がどんどん滲んで、
先生が今どんな表情をしているのか分からない。
でも、きっと困らせている。
私が雪斗くんに会って、その後はどうなってもいいと言っても、
先生はそれを許さないだろう。
先生は、医者だから。
人を、病気を治すのが、先生の仕事だから。
「雪乃ちゃん、今回は医者として譲れない。…ごめん」
その後、私が何も言わずに涙を流していると、
先生は病室を出て行った。
「………出て行って…」
何か声を掛けようか迷っていた看護師を
冷たく突き放し、布団を深く被りこんだ。