あなたの世界にいた私

「………っ、!」

一人になった時、突然吐き気が襲ってきた。

(ダメだよ。
 せっかくお母さんが買ってきてくれたリンゴなのに、
 ここで吐いたら無駄になってしまう)

頭ではそう言い聞かせているのに、本当に体は正直だ。
さっき食べたリンゴを全て、吐き出してしまった。

「雪乃⁉大丈夫⁉」

病室に戻ってきたお母さんが、私の姿を見て、
すぐに背中をさすってくれた。

泣けば、もっと苦しくなる。
そんなこと分かっていたけど、お母さんに申し訳なくて、
涙を止めることが出来なかった。

「………ごめん…お母さん………リンゴ」
「大丈夫よ。大丈夫だから、深呼吸して」

そう言って、
お母さんがナースコールに手を伸ばそうとして、すぐにそれを止めた。

「…雪乃?」
「…大丈夫だから………もう、大丈夫」

そう言って、無理に笑顔を作った。
なのに、お母さんは心配性だから、そんな私をお構いなしに
カチッとナースコールを押してしまった。
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