あなたの世界にいた私

お母さんが、
目を覚ましたんだと思って、嬉しかった。





嬉しかったんだけど、
それは一瞬だけだった。




「…ごめんね、雪乃…。







…1人にして、ごめんね」







そう言うお母さんの言葉は、
まるで最後のように。





優しく微笑んで、
なのに、目から涙が溢れていて。








私はその時悟った。








もう、お母さんはダメなんだと。








「……嫌だよ…お母さん」





ギュッと手を握ると、
お母さんも握り返してくれた。




その手には温もりがあって、
いつも握ってくれていた時と同じだった。




なのに、最後なんだと言われているようで、
離れたくなかった。






なのに、私の身体は限界が近づいていた。






「…お母さん…







今まで……ありがとう……






…大好きだよ」







私がそう言うと、
お母さんは微笑んで言ったんだ。






「雪乃…生きて…ね。









…お母さんも………大好きだよ」







そう言って、お母さんはそっと目を閉じた。







その瞬間、
死を告げる心電図モニターが音を鳴らす。




そして、同時に私も足に力が入らずその場に崩れ落ちた。



「雪乃ちゃん!?
すぐにストレッチャー持ってきて」



「はい!」





院内が一気に騒がしくなる。

< 45 / 207 >

この作品をシェア

pagetop