あなたの世界にいた私
「…ちゃん……雪乃ちゃん」
私を呼ぶ声が聞こえて、目を開けると、
いつの間にか、いつもの病室に戻っていた。
「…お母さんは?」
「……さっき息を引き取った」
「…そっか」
口ではそう言っても、涙は止まらなかった。
目から涙が溢れて、次々と流れ落ちていく。
泣いたってどうにもならないのに。
「気分、悪くない?」
「…大丈夫、
大丈夫だから…
…1人にして」
本当は一人にしないで欲しかった。
誰でもいいから、そばにいて欲しかった。
「…雪乃ちゃん、何かあったらすぐ呼んで」
「…どうして…?」
病室を出ようとする先生に、
疑問を投げかけた。
「…どうして…
…お母さんじゃなくて
…私を
…助けたの?」
「主治医だから。
…俺は、雪乃ちゃんの主治医だからだよ」
そう言って、先生は病室を出て行った。