あなたの世界にいた私
「雪乃ちゃん‼
どこに行ってたんだ⁉」
「……散歩」
病院に戻ると、
私の主治医である工藤優真先生が
駆け寄ってきた。
「散歩って…
…あのなぁ」
「分かってるよ…
…分かってるから…もういいでしょ」
私は、外に出ていけるような体じゃない。
いつ、倒れてもおかしくない。
そんなこと、分かってる。
何回も言われたから。
小さい時から、
病院から出たのなんて、
指で数えるぐらいだった。
それぐらい、私の体は弱かった。
「全然分かっていない。
雪乃ちゃんは、今は」
「今はじゃないでしょ?
……ずっとでしょ?
…これからだって、ずっと病院に縛られて…。
そんなこと言うんだったら…
…早く治してよ‼」
私は何をそんなにも、
ムキになているんだろう。
私の病気は治らない。
分かっていたはずなのに、
どうして泣いているんだろう。
泣いたのなんて、いつぶりだろうか。