あなたの世界にいた私
-コンコン
「失礼します」
そっと声のする方に視線を向けると、
いつもの優真先生で、
目を覚ました私に気づいていないのか、
点滴を確認していた。
「………せん…せい」
「!?…雪乃ちゃん」
どうしてそんなにも驚くんだろうと思いつつ、
右手に違和感を覚え、視線を送ると誰かが、
私の手を握ったまま眠っていた。
顔が見えなかったから誰かわからない。
そう言いたかったけど、
髪型だけで分かってしまった。
「……雪斗…くん…?」
出にくい声を頑張って出すと、
その声が彼の耳に届いたのか、
ムクっと上半身が起き上がった。
「……どうして…?」
「…よかった…
…本当に…
…よかった」
私の質問には答えず、
ただ”よかった”と言って涙を流していた。
「…もう…起きないかと思った」
そして、雪斗くんは
私の掴んでいた手をぎゅっと力強く、
でも優しく握った。