あなたの世界にいた私
-コンコン
「…失礼…します」
遠慮がちに発せられた声。
私と目が合うとバツが悪そうな顔をして、
私に声をかける。
「…先生呼ぶね」
「待って」
そう言って、
病室から出ていきそうな彼を引き止める。
「ごめん!」
何も言わない私に、頭を深く下げて謝った。
「…雪斗くん、私は病気で普通の人とは」
「病気だからとか関係ない!」
雪斗くんが、
私の話を遮ったのは初めてだった。
怒ってる姿を見るのは初めてだった。
「それに、雪乃が普通じゃないなら、
僕だって普通なんかじゃない。
僕は……ただ、
雪乃に会いたいだけなんだ。
…それだけで…元気をもらえるし、
もっと頑張ろうって…思えるから」
泣きながら、訴えかける彼を
これ以上、拒むことなんて出来なかった。
「……分かった」
「…本当…?」
その問いかけに私は頷いた。
「でも、約束して。
これからは何があっても、
私のことで涙を流さないで。
…これが出来ないなら」
「分かった!分かったから」
私が、この世からいなくなってもだよ。
とはあえて言わなかった。