あなたの世界にいた私
「お前、女まで作ってんの?」
突然聞こえてきた声は、
とても低くて、
淡々とした口調だった。
「奏斗…?」
「…奏斗って、卯月奏斗…?」
「へぇ〜、俺の名前知ってんの?
あ、雪斗の女だから話ぐらい聞いてるか」
さっきから、
”雪斗の女”と言う言葉に引っ掛かる。
私は、そんなんじゃない。
「私は、雪斗くんの女なんかじゃない。
世界中にいるファンの一人です」
「ファン?ならなんで抱き合っての?」
鼻で笑うように言った言葉には、
どこか怒りが混じっているように思えた。
「雪乃、もういいよ。今日は帰って」
「え、でも」
「いいから……帰って」
「……分かった」
そう言う雪斗くんの目は、
どこか冷たかった。
「大事にしてんだな、その女」
私が帰ろうとした瞬間、
奏斗くんによって発せられた言葉。
「うざいんだよ。
デビューできて、女まで作って。
……お前なんか…
…消えればいい」
そう言って、
後ろに隠されていた包丁を
雪斗くんに突きつけた。