あなたの世界にいた私
そして、私が目を覚したのは、
事件から一ヶ月が経とうとしていた頃だった。
「雪乃ちゃん、聞こえる?
聞こえたら手握ってくれる?」
優真先生の声が聞こえ、
そっと目を開けると同時に、
先生の手を握った。
でも、全く力が入らなかった。
そして、ぼやけていた視界がはっきりすると、いつもの病室に先生と看護師、
それから雪斗くんがいた。
「……わた…し…うっ!!」
そう言って、起き上がろうとすると、
腹部に激痛が走った。
「まだ、傷が完治してないから痛むと思う。
だから、安静にしてて」
その言葉に頷き、
隣にいた雪斗くんに視線を移すと、
心配した目で私を見ていた。
「…大丈夫……だよ」
私がそう言うと、
彼の目から一つ、二つと涙が頬を伝った。
「ごめん、泣かない約束だったのに」
「……今日だけ…特別に許す」
そう言って、笑顔を向けると、
雪斗くんは目から溢れてくる涙を拭いながら、
何度も頷いた。
「じゃあ、またなんかあったら呼んで」
一通り私の診察を終えた先生がそう言うと、
病室にいた看護師たちと病室を出て行った。