恋愛ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、推しカプの仲人に忙しいので、そちらはどうぞ勝手にお幸せに


黒髪を一本の乱れもなくきつく結い上げ、身につけたのはなんの装飾もない黒いワンピースドレス。鋭い目つきの瞳も黒い。女性にしては長身で、ほっそりした体つき。まだ22歳なのに、倍は生きてきたような威厳を感じますわね。

「マルガレーテ・フォン・バーセンハイム公女殿下ですわね」
「はい」

わたくしの名前を呼んだのは、カイン王太子殿下の乳母(ナニー)であり、王太子宮の女官長を務めるアンナ・フォン・ロックス。ロックス伯爵家の次女。

この方こそ、アク物を再プレイする度にほぼアベルと結婚する最大のライバルなのですわ。

(たしか、この時点ではまだ2人の縁談は持ち上がっていなかったはず……)

「王太子妃に相応しい教養を身につけたい、とのご要望でしたわね?」

アンナの発言で、ハッと現実に引き戻される。お姉様のお供をした目的は、マリネの恋敵(ライバル)の動向チェックと、妨害工作のためです。ここでしくじるわけにはまいりません!

「はい。わたくしのバーセンハイムでは、とても大国の王太子妃に相応しい教養を身につけることができるとは思えません。貴婦人中の貴婦人でいらっしゃるアンナ様にぜひともご教授いただけたら、と思いまして」

モニカ王女よりも手強いライバルが目の前にいますわ。
緊張もするけれど、心の中はやる気でメラメラ燃えていますのよ。

「わたくしの学んだ先生でよければ紹介いたします。王妃様のお妃教育をなされた方も多いですから、あなたも王太子妃に相応しい教養を身につけることができるでしょう」
「本当ですか!ああ、アンナさんありがとう!」

無邪気さを装いアンナの体に抱きつけば、すぐ引き剥がされたけれど……ほんの少しだけ彼女の頬が赤かったですわ。
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