恋愛ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、推しカプの仲人に忙しいので、そちらはどうぞ勝手にお幸せに
「は、は、はっ!」
「まだまだ踏み込みが甘い!剣もしっかり握りなさい!」
ーーあれ??
わたくしがアンナを連れて王立練兵場に来たとき、予想外の人の姿があり、一瞬ぽかんとしてしまいました。
「……カイン殿下?」
騎士に混じって剣を振る小さな姿は、紛れもなくあのわがまま王太子ですわ。
状況が理解できないわたくしに、アンナが説明をくださいました。
「1か月前からですね。カイン殿下が突然、武芸を身につけたいとおっしゃられたのです。ですから、専属近衛騎士のガストン様が稽古をつけてます」
(どうした風の吹き回しでしょうか?努力が嫌いなはずですが……あ!そうか)
わたくしの頭にはその理由が閃きました。
(わたくしが、ヒロインの存在を明かしたからですわね!きっと、彼女に相応しい男になるために…ふむふむ。やるじゃありませんの!)
あの様子だと遊び半分ではなく、真剣そのもの。どうやら筋も良さそう。
わたくしがプレイしたアク物の中ではカイン王太子の剣の腕はからっきしで、パーティーを組んで魔物を討伐するエピソードでも役立たずだった記憶しかないけれども……まあ、自由度の高いゲームだからこんな展開もあるのかもしれませんわね。
そして、練兵場に来て意外な発見がありました。
(あ!)
アンナの視線が向かっていた先は、近衛騎士のガストンで。さり気なさを装ってはいたけれども……かすかに頬が染まったのを見逃しませんでしたわよ!
(そうか……この世界でのアンナはガストンが好きなのね!)
アク物を何十回もプレイした時には、アンナはガストンと何回か結婚をしてる。だから相性は悪くないはず…と2人をくっつけるつもりでいましたが。
予想外の吉報に、小躍りしたい気持ちを抑えるのが大変でしたわ。