恋愛ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、推しカプの仲人に忙しいので、そちらはどうぞ勝手にお幸せに
(自分から関わるなと言っておきながら、こちらから話しかけるのはなんか気まずいですが、仕方ないですわ。アンナとマリネのためですもの)
仲人プレイの成功のためならば自分の薄いプライドなど、くしゃくしゃに丸めてゴミ箱にポイッ!ですわ。
「あ、マルガレーテ様!」
アンナの焦った声はスルーしたわたくしは、無邪気な6歳児のフリをしてカイン王太子に駆け寄りました。
「カイン殿下!なにをなさってらっしゃいますか?」
「あ…」
ちょうど素振りが終わったところでしょうか。タオルで汗を拭いていたカイン王太子がこちらを見た途端、なぜか目を見開いて…プイッとそっぽを向いてしまわれましたね。
(あらーやっぱり嫌われましたわね。ま、当たり前でしょう)
前世含めて40年生きていますから、別に子どもに嫌われたところで痛くも痒くもございませんがね。
「おやおや、殿下。可愛らしいお客様ではありませんか」
カイン王太子に水筒を差し出したガストンがからかうように言うものだから、それをきっかけに自己紹介をしておく。
「はじめまして、バジール卿。わたくしはマルガレーテ・フォン・バーセンハイムと申します」
「オレの名前をご存知とは光栄ですね、マルガレーテ公女殿下」
「それはもう!あなたの武勇伝はたくさんお聞きいたしましたのよ。ねえ、アンナさん」
「えっ!?」
後ろに控えていたアンナに話をふると、彼女はたちまち茹でダコのように顔を真っ赤にする…あらら、思ったよりもうぶだったようですわね。
ガストンはアンナより3つ上の伯爵でカイン王太子の専属近衛騎士を務める。剣の腕はアクスフィア随一と言える剣豪。
茶髪とくすんだ藍色の瞳で、そこそこ整った顔立ち。
身長が高く歴戦の勇士の証である傷痕がすごいんですの。顔にも最近できたらしい傷がくっきりと。