恋愛ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、推しカプの仲人に忙しいので、そちらはどうぞ勝手にお幸せに
二組め仲人開始ですわ
「アベル様、今日はすべてお召し上がりになられましたのよ!」
「そう、それはよかったですわね」
「はい。最初は本当にポリッジ(洋風粥)すらスプーン1杯が精一杯でいらしたのですが…食べやすい果物や滋養によいチーズを中心に、ハーブとスパイスでゆっくり体質を改善していったのです。今はかなり体温も上がって…寝つきもよくなられたそうですわ」
マリネの毎朝の定期報告。彼女をアベルに派遣するようになってから、3年が経ちました。
最初の1週間で…という条件は見事にクリアしたマリネの療法。ただ、アベルの体調不良はかなり厄介で、短期間で劇的な改善が見込めず、マリネが今までの知識や経験をもとにしてもなかなか良くならず。彼女は新しい薬効のあるハーブや知識を仕入れ、一生懸命勉強し努力していますの。
食事だけでなく、睡眠や生活環境や習慣まで事細かに記録し…この3年二人三脚で改善してきましたわ。
アベルも、マリネにぼちぼち身の上話をするようになるくらいには、親密になっている。
実は、アベルは短期間即位した先代王の唯一の子ども……つまりは王子だった。でもその王が身分の低いしかも結婚歴と子どもがある女性を王妃にしようとしたため、議会の反対に遭いわずか半年で退位。
唯一生まれた子どものアベル。けれども、母親は産後の経過が悪く亡くなり、父は後を追い自死。そんな子は王子とは認められず、公爵家の養子として引き取られたのだ…と。
アベルは昔から義理の母親にひどい虐待を受けて育ち、ろくに食べられず下働きも同然の生活を送っていたのです。それが原因で夜も眠れず食も細くいたのですわ。