恋愛ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、推しカプの仲人に忙しいので、そちらはどうぞ勝手にお幸せに

「アベルさまは、今朝朝食を抜かれましたね?」
「…マルガレーテ様?」
「それどころか最近食欲がない……ならば、わたくしおすすめのお料理があるのです。試してみませんか?」

にっこり笑ってアベルを見上げれば、冷静沈着な彼には珍しくほんの少しだけ目が見開かれていましたわ。

彼は他人には厳しいけれども、己に一番厳しくストイック。誰かを頼ろうとか、甘えることをよしとしない。だから、上手く隠してきたでしょうけど……わたくしには通じませんわ。

「体の真ん中辺りに焼けるような不快感がありますわよね?時折、痛むことも」

じっと見据えれば、しばらくしてアベルは観念したように小さくため息を吐かれました。

「驚きましたね。誰もが気付かなかったことを、このような幼いお方に見抜かれるとは」
「ですから、申し上げましたでしょう。わたくしは過去と未来を知ってる、と。前世やり込んだゲームは隅から隅まで舐め尽くすまでプレイしましたのよ」
「……どうやら、信じざるを得ませんね」

アベルにそう言わしめただけでも、この会見は成功ですわね。
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