恋愛ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、推しカプの仲人に忙しいので、そちらはどうぞ勝手にお幸せに
「マリネ」
「は、はいお嬢様」
「アベル様を診て差し上げて」
「はい」
わたくしの後ろに控えていたクラシカルなメイド服姿のマリネを呼ぶ。彼女は平凡そのものな顔立ちで、そばかすまである。髪の毛も瞳も茶色だしより地味に見えてしまうけれど。わたくしが彼女を重用しているには理由があるのです。
「きゃっ!」
「危ない!」
マリネは慌てて前に出ようとして……案の定、何もないのに躓いて転びかけたけれども。離れた場所にいたアベルが彼女を抱きとめて事なきを得ましたわ。
「大丈夫ですか?お怪我は」
「す、すみません~ありがとうございます」
アベルの問いかけに、マリネがアワアワしながら答えているけれど。わたくしには眩しすぎるビジュアル…!
(はぁああ!なにこのご褒美!2人が抱き合ってる…!尊い!尊すぎますわ!!!)
興奮しすぎて錯乱気味になった脳内をなんとか鎮め、コホンと咳払いしたあとにマリネに問いかけた。
「マリネ、あなたの見立てはどう?」
「…そう、ですね」
計らずともアベルの肌に直接指で触れられたマリネは、さっきまでのドジっ子とは同一人物とは思えないくらい凛とした空気を纏い、顔つきまで変わった。
「……アベル様、幼少期よりあまりお食事を摂られてらっしゃいませんね?その影響でもとより少食でらしたのが、最近さらに食欲をなくされている……召し上がられるのも、パン一切れやスープがせいぜいなのではありませんか?」