麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑥/伝説のあの夏…、ファーストレジェンドは奇跡を生んだ!
壮絶の川原/その10
ケイコ



私は麻衣のサンドバッックと化していた…

立ち上がっての殴り合いでは、到底勝負にならない

このままじゃ、ダメだ

やられちゃう…

テツヤ…


...



「…いいか、おけい。ケンカに手慣れた相手に”負けない”必要要件は、オレが考えるところ3つだよ。ます、相手に決して劣らない気迫と根性。それには絶対に勝負をあきらめない気持ちも含まれるが、これはさ、お前十分すぎるほど備え持ってるからクリアね、はは…。次に、クレバーであること。まあ、ココだわ…」

と言って、テツヤは指で自分のアタマを指した…

「要するに、アタマを使って戦えるか否かなんだが…、もう少しかみ砕くとこうなるよ。…あくまで冷静な状況判断を保持しつつ、それに基づき瞬時に機転を利かせ、大胆にやってのけられる…。これもさ、おけい自身が自覚してるかどうかは知らんが、ナチュラルなものとして身についてる。だから問題なしね」

「じゃあ、最後のもう一つが私の今足りない部分なんだね…」

「うーん、どうかな…。それはさ、非情に徹せられるかどうかってことだよ」

「非情さか…。いやあ、それ、やっぱり私には不足してるマインドだわ。はは、自分で言うのも何だけどさ」

この時、テツヤは優しく笑ってたわ


...



「あのさ…、この非情になれるって気持ちはよう、何も相手に対してだけのものじゃないんだ。要は、自分にも非情さを徹することができるかなんだよ」

テツヤはいつも明確に即答してくれる

例えそれが、どんなに難しい問いであっても…

変な話だが、コイツがエロ男でもモテモテなの、そんなところと無関係じゃないかなってね…

だって私、そんな彼を文句なく素敵だと思えるんだもん


...



「なるほど…、自分に対してもか…。でも、具体的にどうすればいいのかなあ…。実際にまあ、麻衣を相手にタイマン勝負となってさ、その時戦ってる最中の私としては…」

「うん。分かり易く言えば、さっきの2つを持ち続けながら、捨て身になれるかどうかだよ」

「捨て身…」

この一言によって、私はある側面で覚醒されたと思う

まともに戦ったらとても勝ち目のない相手に対して、勝つことではなく、負けないこと…

それは絶対に屈しないという、決死の信念から誘導できる意志だ

弱き者、持たざる者は、相手をひれ伏せさせるという観念よりも、相手に屈しない強固な鉄の意志を相手の心に打ちこむ…

相手がへこたれるまで…

これができれば、かけがえのない勝利につながる光を生み出すことができる

捨て身になれてこそ、己に向けても非情と言える…

そうなんだよな、テツヤ‥





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