麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑥/伝説のあの夏…、ファーストレジェンドは奇跡を生んだ!
死闘、果てず/その9
多美代



「岩本さん、今日のところはこういう場になった訳だし、本郷の言葉を信じますよ。だが、こんな仕打ちを受けて、我々としてもハンパなとこじゃ収まりは着かない。よほどの覚悟を以って来い!そう矢吹が言っていたと伝えて欲しい」

さすがに矢吹先輩…

言葉は荒げなくとも、相手に対しては決して妥協しない姿勢をきっちりだ

「…わかった。なら、あの二人を制止する件は申し合わせ通りでよろしく。じゃあ…」

岩本のヤロー…

子分10数人を連れて、私らの真ん中、悠然と闊歩して自陣営に戻っていくよ

クソッ、クソッ!


...


「なんて、ふてぶてしい野郎なんだ、アイツ‼」

湯本先輩はもう顔が真っ赤ではち切れそうだったよ…

「あっこ、よく耐えてくれた。今夜の対価は必ず払わせる。ともかく荒子を無事に奪還した後だ…」

矢吹先輩も胸中は怒涛のごとく燃え盛ってるはずだ

でも、立派だよ

私たちはこの人達をいずれ継ぐ立場なんだ

今の先輩たちの姿、しっかりと目に焼き付けなきゃいけない…


...


「みんな…、もうすぐ通行人の通報で警察が来るわ。横田競子と本郷麻衣のタイマンは決着お預けで全員撤収するのよ」

「相川先輩、おけいは誰が連れて帰りますか?」

「あの二人は相和会が車で荒子を手当している病院に連れるとのことよ。一度、相和会本部寄ってから…」

「えー!いくら何でも、敵の車に乗せちゃったらまずいんじゃないんですか?」

「荒子とケイコを引き渡すまで、向こうから保証人を出すそうだから、ここは同意したわ。それに、相和会は星流会なんかとは違うし、今の状態のケイコを二輪じゃ無理でしょ、やっぱり」

「まあ、そうですが…」

「それで…、人質は誰を出すって言ってるんですか?下っ端じゃ話になりませんよ。岩本クラスを要求しましょう!」

「…多美、アカネ…、向こうからは津波祥子が出るそうだ」

そう答えたのは矢吹先輩だった


...


「鷹美、津波は最初から本郷とつるんでたんだ。あの裏切り者じゃあ、信用置けないだろ?」

「あっこ、津波は最後まで荒子の拉致、暴行には反対していたそうだよ。岩本真樹子なんかより保証人の価値は高いよ」

うーん…

凄いことになったぞ!

おけい…

私たちの今の会話は、川の中で命を懸けて戦っているおけいと本郷を見つめながらだった

彼女たちは今も自己のプライドと互いの組織を背負って戦ってる‥

アイツら…、もう本能だけで相手に向かってるよ

あんな原始的な素手の殴り合いじゃ、確かに誰かが止めなければどっちかが死んじゃうって…!

やはり、今日のところは岩本の言う通りにすべきが妥当かも…





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