麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑥/伝説のあの夏…、ファーストレジェンドは奇跡を生んだ!
死闘、果てず/その10
剣崎



能勢が土手への入り口付近を固めていた相和会の人間に手配を済ませて戻って来た

どうやら、本当に通行人が警察へ通報したようだ

「親分、急がないと…」

「よし、段取り通りでいくぞ」

「はい…」

俺は近くに待機していた麻衣の仲間に指示を発した

「おい、今からかかるぞ!警察はすぐ来る。急いで行動に移せ」

「わかりました…。みんなー、警察が来るぞー!撤退だー!」

少女たちは土手下に大声で伝えながら、駆け下りて行った

さあ、麻衣と横田競子とかって子を車に連れなくては…

「能勢、行くぞ!」

「はい!」


...




俺たち二人は、少女たち数十人が慌ただしく撤退に取り掛かって土手を慌ただしく駆け上る中、川めがけて下って行った

「能勢さん!」

「ああ、祥子ちゃん!」

「麻衣たちをお願いします。南玉には、合田と横田引き渡しまで私が出向くことで同意をとってますので」

「わかった。二人は俺たちに任せて早く引き上げろ!」

「はい。よろしくです!」

「親分、あれが麻衣さんの片腕の一人です。あの子に任せとけばこの場は大丈夫ですよ」

「よし…。さあ、このまま川の中へ突っ込むぞ」

バシャバシャ…

俺たちは革靴のまま川の中へ入って行った…


...


「…能勢、俺は麻衣を連れていく。お前はもう一人の方を頼む」

「了解です!」

「わー、離せ―‼」

「まだ、勝負はついてないぞー‼本郷、逃げんな!」

「テメーこそだ‼最後までやってやる!」

なんとも、凄い…

「麻衣、ここまでだ!警察が来るんだ。行くぞ!」

「剣崎さん、離せって‼ヤツをここでぶっ殺すんだ!」

「バカ、ここでサツに連れられたら会長もまずいんだ!」

俺は暴れる麻衣を、力づくで肩まで抱え上げ、即土手を駆け上がった

能勢の方も、もう一人が盛んに駄々をこねてて、往生してるようだ(苦笑)

「離せー‼」

「降ろせー‼」

全く…

二人ともまさしくじゃじゃ馬そのものだぜ…


...


「親分、他の連中は大丈夫そうですね。さすがに逃げ足は速いや(笑)」

「ああ…、サツが来ると言ったんで連中も必死なんだろ(苦笑)」

ふう…

麻衣の野郎、まだ手足をばたつかせてやがる…

こんな小柄だが、暴れられながら担いで階段30段はキツイ…

「さあ、車に入れって…」

「横田ー‼まだ、終わってねーぞ!」

「テメーこそ、ヤクザなんか呼んでんじゃねーよ‼この、卑怯者がー!」

「なんだと、貴様―‼」

後部シート真ん中の俺を挟んで、びしょ濡れの二人はしきりに組みかかろうとしてる

俺は両腕で二人を抑え込んでいるが、互いに中腰になって髪の毛を引っ張り合ってるわ

あれほどの壮絶なケンカを約20分続けて、こいつら、まだこんな力が出るのかよ…


...



「お前ら、いい加減にしろって‼もう、中ではおとなしくしてろ‼」

既に車は幹線道路に出たが、車体が左右に揺れてるよ…

運転してる能勢が、ミラー越しに後ろの俺を見て苦笑いしてやがる…

全くよう…、ガキをあやすのも容易じゃないわ!






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