麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑥/伝説のあの夏…、ファーストレジェンドは奇跡を生んだ!
果実の熱病/その5
剣崎



「…」

「競子ちゃんといったな…。急な話だし、今返事はしなくていい。よく考えて、無理そうなら遠慮はいらん。断ってくれ」

会長がこんな”言葉”を持ち合わせていたとはな…


...


ケイコの前には粉末状の包みが含まれている、クスリ袋のようなものが置かれていた

彼女はじっと、”それ”を凝視してる

いや、何かを問いかけてる…

そんな気がしてならない…


...


俺は直感した

彼女のこの時の顔色、表情、その目を忘れることはないと…

そしておぼろげに予感の念を抱いた

このあと彼女の下す決断は、俺自身の生涯にも大きな影響を及ぼすであろうことを…


...


麻衣とケイコ…

この後、壮絶極まる運命を共有するその瞬間…、熱き果実たる二人は決して視線を合わせることはなかった

だが…‼

俺を挟んで、二人の鼓動が伝わってくる…

極道の世界で生きる俺にとって、二回り近く年下のこいつらを、言わば生死を共にする人間として感じていたのだ

この時すでに…!

それは不思議な感覚だったよ…


...


「…おけい、無理すんな。お前には土台ムリだよ、できない!やめとけ。…それ、”なくても”…、私はお前からは逃げない…。だからよう…」

「…」

何という沈黙だ…‼

これも、一生涯忘れ得ることができない瞬間なんだろうよ!

続き間で畳20畳の空間が宇宙に思えたよ

”そこ”に俺はいたが、はっきりって付録だったさ

主役は他の3人だ

正直言って、麻衣はもう相馬さんとは血縁以上に心が通じ合っているのを、俺は薄々感じていた

そして右隣に座ってるケイコだ…

やはり…、ある面においてはイカレている気がしたんだ


...


「やります…、私…」

この言葉の響き…

ついに決まった…‼

俺はこの子を引きこんでしまったんだ…




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