麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑥/伝説のあの夏…、ファーストレジェンドは奇跡を生んだ!
果実の熱病/その6
剣崎



この時のケイコの心境を、俺はそれ以後、数えきれないほど量ることになる

たどり着いた結論は、この時はある種の熱病に陥っていたのではなかろうかと…

だが…、それは決して一時の気の迷いなどではない

ケイコは、麻衣との対峙にこそ、命がけのレベルにまで持って行けるだけの価値を見い出せたのだろうよ

俺にはそう思えてならなかった

当年とって16歳の少女が、何とも凄まじいばかりの観念と言うほかないが…


...


その後、会長は麻衣と二人で話がしたいと言うことで、俺はケイコを本家の執務室に連れて行った

おそらく会長は、新たにケイコを”抱える”にあたって、今後の麻衣の立ち位置を話し合うのだろう

一方の横田ケイコは、黙って応接のソファに座っていた

しばらくして能勢が室のドア越しに声をかけてきた

「…親分、いいですか?」

俺は室外に出た

「彼女の着替えが用意できましたので…」

「よし、連れて行ってやれ。着替えが済んだら家には電話させとけ。こっちの用が終わったら大黒病院に連れて行って、それからだから遅くなるだろう…。あの子とはよう、うまい言い訳を考えてな…」

「わかりました…」

...


能勢に連れられて、ケイコは別室に歩いて行った

俺は廊下を歩くケイコの後ろ姿を眺めていた

普通の女子高生…

俺はそんなフツーの少女を、犯罪の道へ連れ込んだことになるのか…

そう考えると、背中から脂汗が湧き出てきたよ

それは何とも言えない罪悪感だった…





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