麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑥/伝説のあの夏…、ファーストレジェンドは奇跡を生んだ!
果実の熱病/その7
剣崎



ケイコが着替えを済ませて戻って来た後、再び会長の元へ戻ると、そこには麻衣の姿はなかった

「麻衣とは話を済ませた。…ケイコちゃん、麻衣はこれから、君と南玉連合の”中”で張り合っていきたいという意向なんだが…、どうだね?」

「…麻衣は南玉連合を除名になって、なおかつ、卑劣な手段も使って、組織をぶっ壊そうとした人間です。そんなヤツが南玉に戻れる訳ありません。ふざけんなです!」

会長に正論を堂々とぶつけたか…

ピュア…

そんな言葉が俺の頭をよぎったよ


...


会長はそんな堂々としたこの子の言いっぷりが、嬉しくてしょうがないと言った表情だった

そして、やや笑みの浮かべながら穏やかに言った

「麻衣は今のトップに会って、ケガをさせたことを謝罪の上、けじめをつけると言ってる。正面からだ。その後で、その子が麻衣を許さず、南玉連合への復帰を認めなければそれで終わりになる。だが仮に、その子が麻衣と君を1年の新しいリーダーとして認めたとしたらでいい。どうだ?」

「即答はできません…」

これも毅然とだった

「…わかった。これから剣崎と病院へ行けば、その子に会える。君は君で今後のことを二人で話してみてくれ。…剣崎、ケイコちゃんを連れて行ってやれ。麻衣は他のもんに連れさせる。今日はここまでとしよう…」

会長は”素人”のお嬢さんを気遣って、今日のケイコにはことのほか柔和だった

さしもの相馬豹一も、やはりごく普通の女子高校生となれば、ここまで慎重にならざるを得ないってことなのだろうが…

俺にはどこか、横田競子を一目見て、相馬さんが麻衣とは違った意味でシンパシーを感じたようにも思えた

なぜか…

...


その後、俺の運転でケイコを乗せ、大黒病院に向かった

俺は車の中でさりげなく聞いてみたわ

「…会長の話は断ると思った。君のような普通の子では麻衣のようにはいかない…、本当に大丈夫なんだろうかって気はある」

「…麻衣とはケンカしても決着がつかないことが、実際に”戦っていて”分かったんです。でも、ヤツから絶対に引く訳にはいかないんです。であれば、互いの情念をぶつけ合って、相手に負けない自分を得るしかないですよ…」

バックミラーに映ったその時の横田ケイコの顔は、とても16の少女とは思えなかった

あどけないその顔に、俺は”大人”を垣間見た気がしたんだ…






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