麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑥/伝説のあの夏…、ファーストレジェンドは奇跡を生んだ!
果実の熱病/その8
ケイコ



大黒病院…

ここに荒子さんが収容されているのか…

私はこの寂れた病院の2階で傷の手当てを受けた後、ひと通りの検査を受けた

その結果、骨や脳には異常が無いようで、今日はこのまま自宅へ戻って、週明けにでも他の病院で再度診てもらうようにとのことだった

「…ここは俺たちの業界でよく使われてる病院だ。ある意味、腕はずば抜けていい(苦笑)。…合田荒子は3階の1号室にいるから、会ってくればいい。何も隠さずに話してもらっても構わないしな…」

剣崎さんは、立会いなしで荒子さんに会うことを最初から了解してくれていた

おそらく相和会の会長さんの意向だと思うけど…

ならばだ…

まずは荒子さんに会って来よう

それからだよ、すべては…


...


病室のドアは開いていたよ

「失礼します…」

「ケイちゃんか…!」

「はい…。荒子さん、具合はいかがですか…」

「ああ、骨一本取られたわ。…でもよう、敵さん、迅速に手当てしてくれたんで、ギブス1か月つけてりゃ治るそうだ。今は痛みも落ち着いてるから話は大丈夫だ」

「そうですか…」

荒子さんは痛々しい姿ではあったが、目はギラギラしていて、敗者には見えなかった

そうさ、全然敗者じゃないし!


...



「あのう…」

私はどこから話していいかわからず、言葉がなかなか出なかったよ

そしたら、荒子さんの方から話してくれた

「…”そっち”の状況は相和会の人から概ね聞いたから、ケイちゃんが本郷と”分けた”ことは知ってる。よくやってくれたよ。ありがとう…」

荒子さん…

「…南玉も割れたそうだが、14人が火の玉に参陣したってな。鷹美とあっこは体を引きずってまで…。私が油断したばかりに組織には迷惑かけちまったけど、本郷に屈せず、みんなよくやってくれたって。嬉しい…」

私は南玉連合が分裂したことに、もっと荒子さんが悲しんでいると思ったんだけど…

凄いや、やっぱりこの人…


...


さあ、ここでけじめだ…

「私、改めて言います。総長、横田競子を南玉連合に加えてください!」

「よく言ってくれたな、ケイちゃん…。私は、本郷が思いっきりぶっ壊してくれた南玉連合を一から立て直す。一緒にやってくれるか?」

「はい、共にがんばりましょう!」

今の私に迷いはなかった…

何しろ南玉は死ななかったんだ

それが、言葉には言い表せないくらい嬉しかったよ






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