麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑥/伝説のあの夏…、ファーストレジェンドは奇跡を生んだ!
果実の熱病/その9
麻衣



どうやら”ここ”の3階で、おけいと狂犬娘が”会談”してるようだ

私の方もアタマや骨には異常なさそうだから、ボケボケしてられないや

今夜から次の動きに入らなくちゃ…

へへ…、こっちは電話会談だな(笑)


...


さっそく私は、能勢さんに車でヒールズに送ってもらうことにした…

「…でも麻衣さん、パイプでアタマをやられた時はさすがにドキッとしましたよ。まあ、包帯姿は仕方ないですが、とにかく脳とか心配するような状況じゃなくてよかったですよ」

「ええ。でも、相手は絆創膏くらいしか張らなかったらしいんで、みんなが見たら私の負けですね。はは…」

「麻衣さん…」

剣崎さんと能勢さんは、横田と私のタイマンの一部始終を目にしていたらしいから、私が押されていたのはわかってる

相手はどう見ても普通の女子高生、しかもケンカ慣れしていないのは一目瞭然なのに、私があのザマだったことは、ショックだったろうね

でも、私は決して手を抜かなかったし、別に油断していた訳ではない

あえて言えば、ヤツがあそこまでの”非情さ”を持ち合わせているとは予想外だった

その点で、私の読みに甘さがあったのは否定できないな

だけど、要は横田がそれだけのスゲー相手だったってことだろうよ

で、私の眼に狂いはなかったっこと…

それは間違いないでしょ


...


わー…、ヒールズに着くなり倉橋さん、私の頭が包帯ぐるぐる巻きなんで、えらいびっくりだわ(苦笑)

「おい…、本当に脳には異常ないんだな、麻衣ちゃん!」

「大丈夫ですよ。吐き気とかもないですし、こんな包帯、飾りです」

「ふう…。しかし、まさか麻衣ちゃんとここまでやり合える女の子がいたなんてなあ…。うーん、信じられん…」

アハハ…

撲殺さんがここまで驚いてくれるとはね

それに私のこと、本気で心配してくれてるのが分かるし

ケガもそうだけど、心の方も…

嬉しいや、ホント…

...


「親分…、見た目は本当にフツーなんです、相手の子。真樹子ちゃんみたいにズベっぽくなくて、体も背は高いが、祥子ちゃんのようにがっちりはしていない…。でも、やっぱりオーラはありましたね。気迫も麻衣さんに負けてなかったですし…」

「そうなのか?ぜひ、見てみたいもんだな…」

「はは…、倉橋さん…、時機ツラ拝めるようになるって。そいつにはさ…」

「あ…、そう」

うふふ…、まだ意味が分かってないや、倉橋さん(苦笑)

...


とにかく大きな節目は超えたが、それは終わりじゃなかったわ

そういうことさ…、今夜から新たな始まりってことだよ

あのカモシカとは、もっともっとディープになっていく…

私にはそんな予感がしたよ





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