命令教室
☆☆☆

香を抱えるようにして歩いて教室へ戻ってきた。
修たちが拍手で香を出迎えてくれる。
香はそのまま倒れるように床に崩れ落ちてしまったけれど、その表情は満足そうだ。
それから未来と純子のふたりも教室に戻ってきて、残るは彩と花のふたりだけになっていた。


「随分と暑くなってきたな」


窓から空を見上げて修が呟く。
太陽はとっくに頭上まで登ってきていて、どんどん気温を上昇させている。
長時間グラウンドにいるふたりの汗はここから見ても尋常ではなかった。


「水分補給ってすることはできないのかな?」


このまま走り続けていればいずれ倒れてしまう。
そうなる前に休憩を挟むことができればいいけれど。


「わからない。ホワイトボードに詳細は書かれてないもんな」


修が眉根を寄せて言った。
ホワイトボードは私達に命令するばかりで、その詳細がどうであるかも教えてくれることはない。
私達の分は随分と悪いものだった。

結局、休憩に入るように声をかけることもできないまま、時間だけが過ぎていく。
走り終わった生徒たちもみんなでふたりを応援する。
けれど彩と花の歩調はどんどん遅くなっていくばかりだ。
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