命令教室
☆☆☆
「本当に未来に気に入られてるね」
さっきの出来事を香に相談すると、香は呆れ顔になってしまった。
ここは私の部屋で、隣の部屋から香が遊びに来ているのだ。
消灯時間まであと1時間はあるからバレでも問題ない。
「ほんと、困るよ……」
私と未来は所属しているグループも違うし、性格だって違う。
それなのに未来は私によく声をかけてくるのだ。
潤のようにからかったりバカにしたりして遊ぶのではない。
ごく普通の仲良くなりたそうだ。
「どうして未来に気に入られたの?」
その質問に私は2年生に上がってすぐの頃を思い出した。
そのときは未来の性格もよくわかっていなかったっけ。
2年生初日の学校が終わって教室から出たとき、前方を歩いていた女子生徒のかばんからお守りがちぎれて落ちたのを偶然見つけた。
赤いお守りは黒く変色した部分もあって、紐がちぎれるまでずっと大切にしていたことがわかるものだった。
だから私は咄嗟にそのお守りを拾って、女子生徒に声をかけたんだ。
『これ、落ちたよ?』