命令教室
「教室では今誰が死ぬかでもめてる。修が止めに入ってるけど、それもいつまでもつかどうかわからねぇ」

「そんなっ!」


すでに誰かを犠牲にすると決めている子たちが、香を助けてくれるとは思えない。
私は唇を引き結んでフェンスに近づいた。
それなら、自分がやるしかない。


「香、大丈夫だからね。今そっちに行くから」

「来ないで!!」


香がようやく振り向いた。
その顔は涙がグチャグチャに濡れている。
死ぬことへの恐怖が張り付いている顔だった。


「私なら大丈夫。これで楽になれるんだから、大丈夫なんだよ」


死ぬのが怖くない人間なんていない。
いくら絶望していても、絶望できるということはまだ生きているということなんだから。
香の手がフェンスから離れて体がグラリと揺れた。


「ダメ!!」


叫んで手を伸ばす。
しかしフェンスの隙間から香の体を掴むことはできなかった。
香の体は私の前からふっと姿を消すように、落下したのだ。
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