命令教室
それから私達は予定通り一緒に図書委員に立候補した。
幸い他に立候補する生徒はいなくて、すぐに決定したのだ。

それから1年間、香とふたりでの委員会活動は本当に楽しかった。
学校の図書室に置くための新刊をふたりで選んだり、つい読書に没頭してしまって先生から怒られたり。
こんな日がきっとずっと続いていく。
私と香の関係はなにもかわらない。

そう思っていたのに……。
急に夢の中の世界から色が消えた。
カラフルに彩られた世界が一変して白黒に変化する。
それと同時に周囲の気温が急激に下がってきて、白い息が吐き出された。

一体どうしたんだろう。
不安になって隣に立つ香の手を握りしめる。
その手は信じられないほどに冷たくて私は目を見開いた。
香には表情がなく、呆然として前を向いている。


「香?」


話しかけても返事はなく、私の方をむこうともしない。
嫌な予感が体に駆け巡ったそのとき、隣に立っていたはずの香が忽然と姿を消していたのだ。
音もなく、まるで最初からそこにいなかったみたいに……。
< 145 / 236 >

この作品をシェア

pagetop