命令教室
「うん」


部屋は6畳の和室で、隠れるような場所はなかったと記憶している。
でも、あのときは真夜中だったから部屋の様子に気がつけなかった可能性もある。


「もう1度部屋に行ってみないといけないかもしれないな」


あの部屋に入ったことでこんな出来事が起こっているのだとすれば、解決するためにはもう1度部屋に行かないといけない。
あの部屋に入ることを考えると気持ちが重たくなってくるけれど、仕方ない。


「じゃあ、明るい内がいいかも」


暗くなってからあの部屋に入るのはもう嫌だった。
あの部屋どくとくの気味の悪さが、今でも肌に張り付いているような気がする。


「そうだな。他のみんなも呼んで……」


修がそこまで言ったとき、微かな悲鳴が聞こえてきて声を切った。


「今のは?」

「未来の声だったかも」


悲鳴は女性のものだった。
この施設内に女性は私と未来のふたりしかいない。
私と修は弾かれたように立ち上がり、教室から出たのだった。
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